コーン・フェリーでは7月8日に「経営人材育成3.0 ~サクセッション・マネジメントを変革する~」と題するオンラインセミナーを実施し、日本企業の経営者育成とサクセッションの現状と将来への提言を行いました。そのセミナーで参加者から出た主な質問に対して回答します。なお、本セミナーは秋以降に再度実施予定ですので、今回ご都合がつかなかった方はぜひご参加ください。

 

Q1

会社を変革するために、異質な人材を登用する必要を感じています。その場合、過去の経営陣に共通する資質を選抜基準にしてもいいものでしょうか? 

A1

コーン・フェリーのリサーチデータはかなりの頻度で更新されていますが、経営者に必要な資質の構成要素は大きくは変わっていません。むしろ、経営環境によって、その中の重要度が変わっています。現在は、変化への対応性につながるラーニングアジリティ(学びの俊敏性)やコロナ禍など危機からの回復力の重要度が増しています。最新のデータベースを意識的に使い、将来どんな人材を作りたいかにより優先順位付けすることをお勧めします。(岡田 敬匡)

  

Q2

タレントレビューは「選抜された有望人材」に用いる手法でしょうか? もしそうだとすれば、人材を選抜するにはどういった工夫が必要でしょうか? もし全社員を対象とする場合は、若い社員とベテラン社員など属性ごとに留意すべきことはありますか?

 A2

タレントレビューの理想は全員を対象にすることです。少数ですがこれを実行し、リーダー輩出企業として有名になっている企業も存在します。ただし、全員を対象とすることは運用上のハードルが高いため、実際には選抜された経営幹部候補者に適用する場合が多いようです。効果的に選抜するための工夫としては、パフォーマンスとポテンシャルの基準と水準を定義し、ノミネーターに配布するというのがあります。導入当初の数年は選抜する現場の幹部に人事が直接インタビューをすることで、プロセスがきちんと導入される支援をしているところもあります。

タレントレビューを実施する際の留意点は、目的に応じて重視する人材の観点を使い分けることです。経営幹部への距離が遠いときは性格特性・動機を、近いときはコンピテンシー・経験を重視します。遠いときは、適性があってもコンピテンシー・経験が高まっているはずがないですし、近いときはコンピテンシーと経験から何が出来るかを見極める重要性が高まるためです。(岡田 敬匡)

 

Q3

選抜育成の仕組みを作った場合、選抜されなかった人をどうケアすべきでしょうか?

A3

悩ましい質問で、万能薬はありません。それでも、VUCAの時代には扇の要となる個人の力量が全体の競争優位性を左右するため、多少の痛みを伴ってでも選抜した候補者を徹底的に育て上げる選択をする企業が増えてきています。その際のディモチベーション回避策として考えられるのは、複線型制度の導入により、専門家向きの道を残し、制度的にも報うことができる枠組みを作ることです。その仕組みを導入した上で、経営人材の要件を社員に公開をして、社員へ能動的なキャリア開発を促すことも重要です。(岡田 敬匡)

 

Q4

「性格特性」は一般的に変わりにくいと言われていますが、その前提でのデータ活用でよいでしょうか? 修羅場経験などによって変化する可能性は、どれぐらいあるものでしょうか? 

A4

ご指摘の通り、性格特性はなかなか変わりません。ただ、海外駐在やターンアラウンドなどの修羅場経験で影響を受けることはあります。20代後半で修羅場を体験し、30代後半で測定するとスコアが変わった事例はよくあります。従って、定期的に測ることはお勧めしますが、3年間程度では変わらないと考えた方がいいでしょう。また、強い専門家向きの適性を示している人が、強いジェネラルマネージャー向きの適性に変化することもありません。(岡田 敬匡)

 

Q5

経営人材育成施策におけるアセスメントは、一般的に外部を活用するケースが多いのでしょうか。客観性を考えると外部がベストと考えられますが、企業のカルチャーフィットも重要なので、社内で行うことも一理あると考えます。

A5

外部・内部評価でメリット・デメリットがあるので、使い分けることが必要となります。外部評価のメリットは、先入観なく評価できる点、また外部と比較できる点です。先入観は過去の成功パターンや持論・主観がまかり通ってしまうので、侮れません。外部と比較すると、社内では一番の方でも実は競争力がないといったことはよくあります。その場合は、外からの採用という選択肢が出てくるので、外の水準との比較は重要となります。(岡田 敬匡)

 

Q6

人材要件はどのくらいの周期で見直すべきでしょうか? 毎年、もしくは数年に一度でしょうか? 

A6

能力開発には時間がかかるので、長期ビジョンに合わせるのが理想です。加えて、中期経営計画のタイミングで見直し、調整することを推奨します。(岡田敬匡)

 

Q7

早期選抜&経験付与に取り組んでいますが、30代前半からが対象となっています。20代では「元気な奴」はわかりますが、「経営者」向きか「専門家」向きかの判断にはもっと時間がかかるのではないかと思います。また、どれくらいの人数(比率)を対象とするのがいいでしょうか?

 A7

最初の選抜するタイミングは、将来の経営者の年齢から逆算することが重要です。業界・企業ごとに異なるので、まずはゴールを定め、そこに至るまでに十分な経験を積むことができる年齢を定めることがスタートになります。選抜の精度を考えれば30代の選抜のほうが良いのですが、育成の時間を長めに確保する意味では20代後半での一次プール構築も有効です。実際、多くの欧米企業では、経営者を育てる特別採用コースを用意し、多くの20代がプログラムに参加して実績を上げています。プールのサイズに関しても、定めたキーポジションの数から逆算することを推奨します。一つのポジションに3人の有効な候補者を確保したいとすれば、次世代プールはx3、次々世代はx9というのが理想となります。(増田智史)

 

Q8

タレントレビューを主導するのは誰であるべきでしょうか? CHROなのか、CoE(センターオブエクセレンス)なのか、誰が一般的でしょうか?

 A8

人事以外にも、経営企画やコーポレートガバナンスを管掌する部署が担う場合もあるので一概にはいえませんが、重要なのは一番上の経営職を起点に最初の候補者プールまでを一貫した思想で設計すること、それを可能にする体制を担保することです。階層毎に異なる担当者が部分最適で設計・実行しているケースがありますが、このアプローチだと良い課長/部長はできても、強い経営者は育たないという結果になる場合が多いようです。(増田智史)

 

Q9

海外現地法人のポジションに日本人をつけて修羅場経験を積ませるのも一つの手ですが、そうすると海外人材を現地や世界から登用することができなくなってしまいます。日本人人材の次々世代の育成と、日本人以外の人材の登用および育成との優先順位付けはどのように考えるべきでしょうか?

 A9

大きな方針として、国籍を問わない(本社在籍地である日本人を特別扱いしない)グローバル経営を目指す場合には、現地人材の育成も同じ重要度になるため、ポジション要件により適合し競争力の高いほうを優先すべきとなります。一方、目指すグローバル化の形もしくは段階によって、日本人の経営者の創り込みの優先順位が高い場合には、育成的なポジションを確保し、日本人を優先的にアサインすることも合理性はあると考えます。その場合は、現地社員に与えるマイナスの影響も考慮し、総合的な判断が必要となります。(増田智史)

 

Q10

職務等級的な制度を前提とした場合、経験を積ませるためにあえてジョブローテーションをさせる選抜人材をどのように扱うべきでしょうか?

A10

職務価値が下がるようなローテーションは処遇が下がることによるモチベーションダウンが想定されるため、原則しないことをお勧めします。例えば、子会社の立て直しや事業再生などで選抜人材を投入するときには、その人の処遇が下がらないように個別対応が必要となります。(岡田敬匡)

 

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