日本企業に働き方改革の機運が高まってからだいぶ経ちますが、日本企業の生産性は主要先進国のなかで低い水準にとどまったままです。コロナ禍を経て、働き方改革のブームが去り、今は日本の働き方をめぐる議題のなかで「ジョブ型雇用」「ジョブ型人事制度」というキーワードがホットトピックスになりつつあります。コーン・フェリーの前身の一つであるヘイグループは世界で初めて職務評価の手法を開発したファームであり、長年にわたり多くの日本企業の「ジョブ型制度」導入の支援を行ってきました。この度、その知見やノウハウをもとに、生産性向上につながるジョブ型制度の構築・運用方法を『生産性向上に効くジョブ型人事制度』の書籍にまとめました。本セミナーでは本書をもとに生産性向上に繋がるジョブ型制度構築にかかる重要なエッセンスについて解説。著者の豊富なコンサルティング経験からさまざまな観点での実践的な助言を行いました。

講師:
コーン・フェリー・ジャパン シニア プリンシパル 加藤 守和 氏

 

『生産性向上に効くジョブ型人事制度』

本書は、生産性向上を実現させるために、どのようにジョブ型人事制度を構築・運営するかを解説した書籍です。ジョブ型人事制度は、職務を明らかにする機能を持ちます。本書では、コーン・フェリーが長年に通じて培ってきた職務分析(Job Analysis)の手法を中心に据え、組織・職務をいかに清流化していくかについて論じています。特に、職務記述書をどのように位置づけるかについて悩まれている経営者・人事パーソンにお薦めの一書です。

著者 加藤守和

https://www.amazon.co.jp/dp/4883725790/

 

■日本企業の職場における生産性に関する課題

  • 生産性向上ために人事が行うべきことは何か

加藤氏は始めに、生産性の定義と生産性向上の仕組みについて解説した。

「生産性は『生産性=産出物(アウトプット)÷投入量(インプット)』の式で表されます。生産性が高いとは、いかに投入量が少なくし、それをアウトプットに転換できるかということです。人事でいえば、投入工数あるいは人件費が少ない中でアウトプットを大きくすることが、生産性の高い組織といえるのではないでしょうか」

これを国全体でみると、国の労働生産性は「就労者一人当たりの国内総生産(GDP)=国内総生産(GDP)÷就労人口(労働者数)」で表される。OECD加盟諸国の就労者一人当たりのGDP(労働生産性)をみると、日本の労働生産性はOECD加盟国の平均よりも下回っている。

「日本は世界3位の経済大国といわれますが、この地位にあるのは人口が多いからです。GDPは人口に比例します。日本においては、個々の企業あるいは日本国民の労働力というものが、うまくアウトプットに転換されていないということが大きな問題ではないかと思います」

 

  • 日本の職場で生産性を低くしている四つの要因

それでは日本の職場で生産性を低くしている要因は何か。加藤氏はそこに四つの要因があると語る。「集団意思決定による業務の無駄」「中間管理職の器」「責任の希薄化による社会的手抜き」「全てがやり直しになる鶴の一声」だ。一つ目の「集団意思決定による業務の無駄」とは何か。

「日本の意思決定スタイルは合議であり、関連する皆で意思決定を進める集団意思決定が中心です。合議で決まったことは、スムーズに実行に移すことが得意なお国柄だと思います。ただし、ここでは関連する人を際限なく巻き込んでいくため、関係者が膨張するリスクあります。また、解決が不確実な課題になるほど意見は割れ、合意形成が困難になるリスクがあります」

日本において、高度成長期のように目指すべきサービスや製品が明確な時代は、集団意思決定でもスピード感があり、問題はなかった。しかし、現代は先行き不透明な時代であり、行うべきことは明確ではない。このような状況下で、皆が集まることは時間のかかるプロセスとなっている。

「パーソル総研の調査によれば、会議及び会議準備に膨大な無駄が発生しています。会議の約25%の時間を参加者は無駄と感じています。また、1500人規模の企業では約2億円が無駄な会議に投じられています。やはり集団意思決定をしているからこそ、そこに無駄が生まれているのです」

二つ目の要因は「中間管理職の器」だ。中間管理職の器は職場の業務量にダイレクトに影響する。特に中間管理職の器が小さいと無限に業務が増殖するのだ。

「器が大きいとどうなるか。大きな方向性を示し、方向感があっていることを重視。押さえどころを押さえ、部下を指導し、部下に任せることで組織を動かしていく。このような職場は健全な状態となり、業務量自体が増えることはありません。各自が任されていることに自己効力感を覚え、職場も活気づくことがわかっています」

では「器が小さい」場合はどうか。管理職は上位層への報告などに不備がないことを重視。細部に至るまで子細に確認し、「聞かれることが殆どない」ことであっても、完璧を目指そうとする。

「すると職場はブラック化し、無限に業務が増えることになります。特に、個々の職務が限定されていない日本の職場では、ブラック化が起きやすいのです。各自は自己効力感を持てず、意欲は低下して離職が増えていきます」

コーン・フェリーでは、対象者にどんなリーダーシップがあるのか、六つのリーダーシップの型を測定する診断ツールを保有している。六つのリーダーシップ型は以下の通りだ。

 

・「指示命令」 言った通りにやれ =即座の服従

・「ビジョン」 なぜをわからせる =長期視点の提供

・「関係重視」 まず人、次に仕事 =調和の形成

・「民主」 メンバーの参画 =情報の吸い上げ

・「率先」 先頭に立つ =模範の提示

・「育成」 長期的な育成 =能力の拡大

 

「このリーダーシップスタイルと組織の活性度には大きな相関があります。当社でリーダーシップスタイルと組織風土の関係を調査したところ、3つ以上のスタイルが発揮されていると風土が好調になることがわかっています」

三つ目の要因は「責任の希薄化による社会的手抜き」だ。社会的手抜きとは、集団で作業を行う場合、個人で作業するよりも生産性が低下することだ。ではなぜ社会的手抜きが起きるのか、理由は三つある。

「一つ目は当事者意識の薄れです。『自分がやらなくとも、誰かがやるだろう』と感じてしまい、全力を尽くさなくなってしまう。二つ目は貢献感の低下。『自分が組織に対して貢献できている』と感じる度合いが低くなってしまい、動機が減退してしまう。三つめは評価・報酬への不満です。個々の成果が見えにくくなり、頑張っても正当に評価されないと感じてしまう。皆で仕事を進めていると、一見何かをしていそうで何もしない人が必ず出てきます。これは大企業病と同じ構図です」

四つ目の要因は「全てがやり直しになる鶴の一言」だ。最初の握りが甘いまま、ボトムアップで積み上げていく日本企業の仕事の進め方では、最後に上役の鶴の一声が起こりやすい。

「日本企業では、仕事の起点では経営陣による号令でスタートし、相互に趣旨は理解するものの、明確な青写真の合意はありません。仕事の組み立てはボトムアップで検討をまとめ、社内外のパートナーを巻き込み、取り組みを具体化していく。しかし、承認において『これではない』と鶴の一声が発動されてしまうのです。具体化されたプランによって経営陣の思考が刺激され、鶴の一声が発動してしまいます」

また、リーダーシップスタイルの国際比較の調査をみると、米国や英国、カナダなどはビジョン型が中心だが、日本企業はビジョンがなく、民主スタイルが中心となっている。

「変化が激しい今の時代では、こうした日本の民主スタイルはスピードが遅く、事業も回りにくくなっています」

 

■日本版ジョブ型人事制度の姿

  • 日本で予測される姿はメンバーシップ型からの切り替え方式

近年、注目されるジョブ型雇用だが、メンバーシップ型雇用とどんな違いがあるのだろうか。加藤氏は、日本企業はメンバーシップ型雇用により、職務の定めの無い雇用を行っており、入口の構造として欧米と異なると指摘する。

「日本的メンバーシップ型雇用は、『何の仕事をするか(職務)』の合意無き雇用といえます。新卒一括採用がその中心です。一方、欧米的ジョブ型雇用は、必要な職務に対して職務ベースで合意した雇用です。必要なときに適材を必要なだけ採用するスタイルです。メンバーシップ型雇用はヒトと雇用が直結し、ジョブ型雇用は職務と雇用が直結する点に大きな違いがあるといえます」

そのため、日本的メンバーシップ型雇用では職務が無くとも、雇用解消は困難だ。企業は他の職務での雇用確保努力が強く求められる。一方、欧米的ジョブ型雇用は必要な職務に対して職務ベースで合意した雇用。職務が無ければ、雇用解消は可能だ。企業には配置転換等による雇用確保努力はあまり求められない。入口が特殊な日本のメンバーシップ型雇用が「ゼネラリスト育成」と「定年制度」をもたらしているといえる。ではこれから日本企業はどうなっていくのか。

「私の予想では今後雇用はシフトしないと考えています。新卒一括採用も日本では効率的であり、今後も残るでしょう。日本では定年制度により毎年必ず人が抜けるため、毎年の採用の仕組みは必要になります」

ではジョブ型にシフトしていくとどんな変化が起こるのか。加藤氏は二つの変化を予測する。

「これまでは人を見て仕事の進め方や処遇を決めていました。つまり職場で報連相をしながら仕事の割り振りを決めていた。しかし、これが職務ベース、モジュール切りで進める形に変わっていきます。これからは仕事を切り分け、マネジメントの仕方を変えていくというのが一つ目の変化です。もう一つの変化は処遇。これから処遇は能力ではなく仕事に紐づくようになります。そうした形で適正配分をしようというニーズが生まれるはずです」

こうしたことを押さえていくと、すべての企業、すべての人がジョブ型になるというのは考えにくいと加藤氏は語る。考えられる形式はメンバーシップ型で採用し、一定期間まではメンバーシップ型と相性のいい職能資格制度を導入してゼネラリストとして育成する方法だ。

「ただし、一定期間を越えるとジョブ型雇用になり、適正処遇、あるいは仕事を切り分けて、その人の仕事に合ったマネジメントが行われます。ただし、一部のハイエンドな人材については始めからジョブ型に近い雇用が行われる。こうした構図になっていくのではないかと予想しています」

 

■生産性向上に効くジョブ型人事制度のポイント

  • すべては職務における成果責任(アカンタビリティ)の明確化から始まる

ではどのような要素が企業の業績に影響しているのか。コーン・フェリーでは組織業績に影響を及ぼす因子を7つ挙げ、7サークルモデルと呼んでいる。この7つの因子には二つのラインが存在する。

一つ目は業績に関わるビジネスライン(ハード面)で、「ビジョン・戦略」→「商品・サービス」→「体制・役割」→「業績」のラインだ。同社の統計ではハード要因が優れていれば70%程度業績に影響を与える。二つ目は人に関わるピープライン(ソフト面)で、「体制・役割」→「コンピテンシー・動機」→「リーダーシップスタイル」→「組織風土」→「業績」のラインだ。こちらは30%程度業績に影響する。また、組織風土はその組織を率いるマネジャーのリーダーシップの取り方によって、50%~最大で70%の影響を受けるといわれる。

ここで加藤氏は、生産性向上に効くジョブ型人事制度のポイントを三つ挙げた。一つ目は「職務における成果責任(アカンタビリティ)の明確化」だ。

「生産性=産出物 (アウトプット)÷投入量 (インプット)ですから、アウトプットを出すために最小のインプットを実現することが引き上げにつながります。職務の明確化によりアウトプットの方向性を定めることで、インプットである労働時間を効果的に投入することが可能になる。ここでの職務の明確化とは果たすべき成果責任を明らかにすることです」

では、生産性向上に効かせるための「職務記述書のポイント」とは何か。加藤氏は、上司と部下の間での握りが重要と語る。

「職務についての共通認識を形成し、各人の果たすべきこと=成果責任(アカンタビリティ)を明らかにすることが大事になります。これにより、各人の取り組みの優先順位や守備範囲、上位者の期待を明らかにします。成果責任は3~5年の中期的スパンで定められるものです」

ここで加藤氏は成果責任(アカンタビリティ)について、石切工の寓話を示して解説した。

ある日、旅人が街道を歩いていると、道端にうずくまって何か仕事をしている人がいる。その人に何をやっているのかたずねると、『見ての通り、レンガを積んでいるのさ』と答えた。しばらく道を歩いていくと、また何やら仕事をしている人がいる。何をやっているのかたずねると、『レンガを積んで頑丈な建物をつくるのさ』と答えた。さらに道を歩いていくと、また同じような仕事をしている。何をやっているのかたずねると、『人々への心に平安を与える教会をつくるのさ』と答えた。

「ここで『レンガを積むこと』は『作業』です。この内容は毎回変わります。次に『頑丈な建物を作る』ことは成果責任(アカンタビリティ)です。成果に対する責任を持ちます。『心に平安を与える教会をつくる』ことは目的(パーパス)です。これが中長期のモチベーションをもたらします。職務記述書の範囲となるのは目的と成果責任であり、職務記述書のメインボディとなるものが成果責任です」

加藤氏は、成果責任(アカンタビリティ)を設定するときはバランスト・スコアカードの考えを準用して設定することを推奨している。バランスト・スコアカードとは、1990年代前半に米国で開発された戦略を効率的に組織へ落とし込むツールだ。財務、顧客、業務プロセス、学習と成長という4つの視点で戦略を立案する。

「成果責任の領域には『内部プロセス』『ビジョンと戦略』『外部プロセス』『組織力向上』『経営数値』があります。実際に成果責任を記載しようとすると、多くの場合、認識の齟齬が起きますので、内容を擦り合わせる必要があります」

ポイントの二つ目は「成果責任(アカンタビリティ)に基づく目標管理の運営」だ。成果責任は中期的に、経営から期待される成果を生み出す責任を規定したものだ。それに対し、目標は今期、どこまで達成すれば成果責任を果たしたと言えるかを具体的に定めたものとなる。

「一般的に目標設定では、上司・部下の間で利害の衝突が起こるため、建設的な議論がなかなか進みません。しかし、成果責任では、一度合意した成果責任に基づいて目標を定めるため、 ある程度、期待ベースの目標に導きやすいという効能が望めます」

ポイントの三つ目は「成果創出に繋がる確からしい成功の型」だ。そもそも行動評価(コンピテンシー評価)を行う理由には、社員に成功の型を言語化して示すことで、効果的に仕事をこなす社員を増やし、会社の生産性向上につなげたいという思惑がある。

「そのために、目標管理では『期初に立てた目標を実際に達成したかどうか』を見ますが、行動評価 (コンピテンシー評価)では『成果を出す過程で望ましい行動をしたか』をチェックします。各人が我流で仕事を進めることを是とせず、各等級・職種に求められる行動を分かりやすく定義化。個々の実際の行動のギャップを明らかにすることにより、個々の社員の行動を矯正していきます」

ここで加藤氏は、行動評価(コンピテンシー評価)の抽出方法を三つ挙げた。一つ目はロールモデルの分析だ。周囲が手本にすべきロールモデル人材のインタビューを行い、その人が「何を考え」「どう行動しているか」を仔細に把握することで、社員が真似るべき意識・行動を定めていく。二つ目は職場の暗黙知の言語化だ。マネジャーによる職場の指導ポイントを言語化し、仕事を進めるうえでポイントとされる行動を把握し、職場指導と評価制度をリンクさせていく。三つめは事業責任者・先端人材による仮説だ。ビジネスモデルの転換などに伴い、「こういう人材が必要になるはず」という仮説を立ててモデル化していく。ここでは「仮説→検証」が重要であり、制度導入後も継続的に見直す必要がある。

 

■リーダーシップの重要性

  • 「ワタミ」社でもリーダーシップスタイルが3つ以上ある店長は好業績

では実際の企業ではどのような傾向が出ているのか。コーン・フェリーは大手居酒屋チェーン「ワタミ」社との共同調査プロジェクトを行っている。「ワタミ」と店舗経営の現場(39店舗)で実証研究を実施。役割・責任や業務プロセスがほぼ同一にも関わらず、店長のリーダーシップによって、店舗の好不調に有意な差が確認された。

「3つ以上のリーダーシップスタイルを備える店長の店舗は、明らかに組織風土が良くなっていました。組織風土の良い店舗は人材流出が少なく、顧客満足度が高い。チェーン店では慣れたスタッフが多いとスムーズな運営が行え、それがよい影響をもたらします。逆に人材流出が多いと店舗のオペレーションの安定度がおちる。その意味ではスタッフの定着率は非常に重要です。好業績の店舗では店長の下にセカンド的なリーダーが育ち、スタッフも結束力があり、皆が一丸となってカバーし合う風土があります。すると雰囲気もよくなり、人が辞めないサイクルができるのです」

最後に加藤氏はジョブ型人事制度におけるハードとソフトの大切さについて述べ、講演を締めくくった。

「ジョブ型人事制度は7サークルモデルでいえば、組織の役割や体制を決めるハードの要素といえます。しかし、ハード面の整備だけで生産性が上がるかというとそうではなく、ソフト面も重要です。ハードを動かす人がどうあらねばならないかといった人材開発、組織開発を行わなければ、生産性の向上は達成できません。これは私たちがいろいろな企業とプロジェクトを行った経験から言えることです。これからジョブ型人事制度を導入する企業も多いと思いますが、そこではハード面とソフト面を含めて整備していただきたいと思います」

 

Q&Aセッション

Q:リーダーシップスタイトルはどのスタイルが適切か、ということよりも、リーダーがスタイルを複数持っていたほうが、組織風土がよくなるということでしょうか。

加藤:6つのスタイルの中で組織風土と良好な関係があるといわれるのは、ビジョン型、民主型、育成型です。ただし、組織で上に行けば行くほど、関係重視型や率先型、指示命令型なども必要になり、これらを使い分ける必要が生まれます。ただし、指示命令型に寄ったマネジメントをしているとリーダーとしての幅は広がりません。一方、ビジョン型では目的を達成するためにいろいろな手段を講じるので、いろいろなタイプのリーダーシップを発揮しやすくなります。その意味ではビジョン型、民主型、育成型あたりを選ぶことが、もっとも組織風土の底上げにつながるといえるでしょう。

Q:個々にリーダーシップスタイルを3つ以上立たせるようにするには、どうすればよいでしょうか。

加藤:スタイルを3つ以上立たせるためには自己認知しなければなりません。そこで一度、リーダーシップスタイル調査を行うことをお勧めします。すると自分の型は何か、いくつスタイルを持っているかが明らかになります。そのうえで自分自身は何を伸ばしたいのかと考えることが大変重要です。自分で気づく機会を必ず得ること。他人が押し付けるようなやり方では人材開発はうまくいきません。企業が行うべきは気付きの機会の提供と立ち上がるための支援です。ここで例えば、すべてのメンバーにビジョン型を持たせたいと思えば、研修や経営塾で経営者の薫陶を与え、どれだけビジョナリーに物事を考えられるかを試したり、自分たちで企業の中期計画を考えるワークショップを開くなどのトレーニングを行うとよいと思います。

Q:成果責任で関係を維持するためには、どのように定義し、どのように結果を測定すべきでしょうか。

加藤:成果責任をすべて目標に反映するかというのは、企業によって変わると思います。一般に個人が目標を掲げられる数は5つくらいが限界といわれます。一方で成果責任はどれくらいの数が適切かというと、だいたい12個くらいです。それをすべて目標に落とし込むかというとそんなことはなく、選択と集中で特に注力してほしいものを基準に整理します。最終的には、やはりマネジメントとして選択させたいものを目標に掲げるというやり方になるかと思います。

Q:ジョブ型を採用しつつも、新卒を一定期間、メンバーシップ型で育成する場合には、育成期間とはどれくらいがベストでしょうか。

加藤:私の経験値でいえば、新人が係長やリーダーといったポストの内容を認識できるくらいからが適切ではないかと思います。メンバークラスではあまり仕事が分化していませんが、係長やリーダーになれば、人をまとめるといったポジションになり、明らかに職務として切り出していけるようになります。そのあたりからジョブ型に転換しやすくなるのではないでしょうか。ただ、企業ごとに戦略もありますので判断には違いがあると思います。

Q:ジョブ型制度になると、個人に複数の職種を経験させるといった育成プログラムが行いにくくなるように思います。どのように行えばよいでしょうか。

加藤:ジョブ型制度とは、その時点、その時点における戦略を切り取ったものといえます。質問者が言われているのは経験を積み重ねるローテーション戦略ですから、その時点その時点において、どのように経験を持たせて、最終的に就かせたい仕事に至るような能力や経験を持たせていくかと考えることが必要になるでしょう。これは言い換えるとサクセッションプラン(後継者育成計画)といえます。必要なキャリアパスを先に設計して、候補者になりそうな人を順番に当てはめていく。ただ、これを成功させるためにはメンバーシップ型における伸びしろの部分を、ジョブ型でも意識することが重要です。ジョブ型では必ずキャリアの固定化が起きるので、伸びしろの部分をどの時点に持たせていくのか。ある程度若いうちにメンバーシップ型雇用、職能制度のよい経験を積ませることを、戦略的に行うことがポイントになると思います。

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コーン・フェリー・ジャパン シニア プリンシパル

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