コロナ前から顧客の購買行動は大きく変化しています。しかし、それにも関わらず、昔ながらの営業手法から脱却できていない企業は少なくありません。そこで3回シリーズのセミナーで、営業変革ソリューションのリーディングカンパニー Miller Heiman Groupの方法論と、コーン・フェリーの人材・組織ソリューションを融合させた、世界最先端の組織的な営業手法と仕組みづくりについて解説します。

 

シニア ビジネスディベロップメント ディレクター 野見山 健一郎氏

 

  • セールスイネーブルメントにおけるテクノロジーの役割と現状

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)という言葉を最近よく聞く。セールスイネーブルメントとは、顧客接点組織(営業・サービス・マーケティング)全員が、日々の顧客とのやりとりの中で付加価値を与え続けることが可能となる、一貫性及び拡張性のある仕組み、支援を提供すること。また、その仕組み・支援を通して予測可能な営業成果の向上を実現するように設計された、戦略的かつ協働的な規範(に基づく取り組み)のことだ。

「セールスイネーブルメントと聞くとテクノロジーの導入のように思われるかもしれません。実際は、組織的に協業を進めていく『協働プロセス』のデザイン、それを支援する『テクノロジー』の導入、パフォーマンスを上げる『人財戦略』、運用を行う『オペレーション』という四つのファクターを回し、データ分析を行いながらプロセスを見直すサイクルのことです。営業やサービス、マーケティングといった顧客と接する方々が、日々のやり取りの中で常に相手に付加価値を与え続けられるような、一貫性および拡張性のある仕組みづくりをいかに行うかということです」

セールスにおけるテクノロジー活用はどの程度進んでいるのか。世界500社の調査によれば、営業のデータ化、DX、効率化を目指してさまざまなセールステクノロジーが導入されており、全体の94%の営業組織が既にCRM(顧客管理システム)を導入している。

「1社当たり平均10種類のツールが導入されています。『今後12ヵ月で導入を検討しているものがあるか』と聞いたところ、平均4種類を導入予定でした。各社で非常に多くのツールが導入されています」

しかし、この調査からは課題も浮き彫りになっている。「自社のセールステクノロジーが日々の業務と連携しているか」と聞いたところ、「できている」と答えた営業組織は約27%だった。「自社セールステクノロジーがCRM等と統合され効率的なデータ活用ができているか」という質問では、「できている」と答えた企業は約28%だった。

「ツールは数多く入れているが、パッチワーク的な導入になってしまい、営業に対して効率性が上がっていない企業が非常に多いことがわかります」

また、別の調査からは「営業は勤務時間の30%しか、営業活動に使えていない」「マネジャー職は、チームメンバーへのコーチングに費やす時間の2倍の時間を社内レポーティングや調整に費やしている」という結果が出ている。つまり、営業担当者は潜在顧客に対して十分な時間を割くことができず、マネジャーも十分なコーチングもできていないということだ。

ここで野見山氏は、CRMの課題とその原因について解説した。

「CRMの課題は、導入に対して多くの時間とコスト割いていますが、ROIが期待外れになっていることにあります。売上予測とパイプライン管理の効果性が向上せず、営業組織の活用度も改善していない。原因としては『✓をつける』『情報を入力する』ことの重要性への営業の認識の低さが関係しています。営業はその行為に対する見返りが少ないと感じている。そして、営業は案件の成約に向けたステージと確率のみに着目する傾向が非常に強くなっています」

その根本原因といえるのは、CRMが顧客との関係を管理するために設計されておらず、営業マネジャーが営業担当者を管理するために設計されている点だ。

「そのため、顧客との関係・案件進捗や成約に向けたインサイト提供もありません。CRMではこうした現場が望むこととのズレが起こっています」

 

  • 世界トップ企業が取り組む勝率を上げるセールステクノロジー導入のアプローチ

では、セールステクノロジーの導入と現場のギャップを埋める鍵は何か。それは、CRMのあり方を、営業メンバーの「行動管理の設計」から「顧客との関係性管理の設計」へと起点を変革していくことにある。

「そのうえで『顧客起点』の関係性向上・案件進捗・成約率向上に向けて、次にどんな行動が必要かといったインサイトやアラートを提供できるものをつくることです。インプットの見返りがあるツールとなることが望まれます」

 

ここから野見山氏は、それらを実現するために必要なステップについて解説した。

ステップ1.「顧客起点」の営業(行動)プロセスを設計する

世界のトップ企業では、プロセス全体を今一度見直す傾向が強くなっている。そこでは改革の入り口として、営業(行動)プロセスを「顧客起点」で設計し、顧客の変化に柔軟に適応させている。

「そうすることで各社よい成果が得られています。調査結果を見ても、顧客の意思決定プロセスにきちんと適用できている企業は、そうでない企業よりも案件の勝率が約17.9%高く、現場の営業も個人目標を達成している達成者率が11.8%高くなっています」

さらに世界トップ企業では、マーケティング・営業・カスタマーサポートの縦割りの役割分担から脱却し、より横串にシームレスの連携を行える運用モデルのシフトに取り組んでいる。

「それによって情報共有もシームレスに行われ、顧客が継続的に複雑化するようなパターンでも、連携して対応できる仕組みづくりが行われています」

 

ステップ2-1.「顧客起点」の営業(行動)プロセスを組織的に運用する

次に野見山氏はマトリックス図で示した分析レポートを紹介した。この図は横軸に「営業の行動プロセス」、縦軸に「顧客リレーション」を取って、営業の現状がどうなっているかを示したものだ。黒部分はレベル1で「属人営業」、グレー部分はレベル2で「形式上のプロセス」、緑部分がレベル3で「正式プロセス」と「ダイナミックプロセス」を示している。

  • 属人営業:組織的に取り組む行動プロセスがなく、個々人のスキルに依存する
  • 形式上のプロセス:形式的に行動プロセスを作成するが、一部運用又は運用していない
  • 正式プロセス:組織的な行動プロセスがあり、組織全体での運用徹底度が高い
  • ダイナミックプロセス:市場・顧客意思決定プロセスの変化傾向を基に行動プロセスを定期的に変更する(セールスオペレーション主導)

「調査によればレベル3『正式プロセス』と『ダイナミックプロセス』に属する企業では、他と比較して圧倒的な好業績を残しています。案件の勝率は9%高く、目標売上の達成率は5%高い。そして、個人の販売計画の達成者率は11%高くなっている。このように顧客起点のプロセスを見直して、きちんと組織的に運用できるように業務を組み立てていくと多くのメリットが得られます」

 

ステップ2-2.「顧客起点」の営業(行動)プロセスを組織的に運用する

世界トップ企業では具体的な営業プロセスにおいてどんなことを行っているのか。野見山氏はそのポイントをまとめている。

  • 案件の早期に優先順位をつける基準(フレームワーク)を持ち、案件を絞り込んでいる
  • 顧客意思決定プロセス・影響者をマッピングする共通フレームワークを持ち、活用している
  • 顧客意思決定プロセスの変化に対し、柔軟に営業プロセスを変更している
  • 営業トレーニング・コーチング手法と営業(行動)プロセスを連携させている

 

ステップ3.「顧客起点」の営業(行動)プロセス運用とセールステクノロジーを連携させて定着を図る

世界トップ企業では、まずプロセスを見直し、それを支援するテクノロジーを導入して連携させ、定着を図るアプローチが行われている。

「全体の75%において、きちんとCRMを使っていると勝率が高くなるというデータが出ています。中でも『正式プロセス』『ダイナミックプロセス』で連携させたほうが勝率も20%ほど高く、同様に目標の達成者率も高くなっています」

 

実際に同社がセールスイネーブルメントのソリューションを提供した企業においては、平均で案件の成約率は約21%アップ、個人目標の達成者率は31%アップという成果が出ている。顧客からのフィードバックでは「インサイトがきちんと得られるので今取るべき案件は取れるし、その次のレベルにある案件における顧客とのリレーション向上も図れ、これから案件をつくるレベルも非常に使いこなせている」といった声が聞かれている。

「実際の業務の進め方においては、小さいところから始めて徐々に広げていくといったやり方も可能です。始めに顧客起点の営業プロセスを描き、そして、パースペクティブ・セリングのプロセスを描く。そして、それに沿ったテクノロジーを導入していくといった手法を、ぜひ今後のセールスイネーブルメントの強化において検討いただきたいと思います」

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