年の瀬が近づき感じること

早いもので、今年ももう11月である。木々の紅葉が、年の瀬が近づいていることを知らせてくれる。「年の瀬」と言えば、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。私にとって「年の瀬」と言えば、何といっても「第九」である。「サントリー1万人の第九」というイベントをご存じだろうか。大阪城ホールの完成記念として、当時サントリー社長であった佐治敬三さんのリーダーシップの下、1983年に産声をあげた。現在は、ウィーンを拠点に活躍される佐渡裕さん指揮の下、一般公募の参加者1万人がベートーヴェンの「第九」をうたう。今年はコロナの影響で、38回目にして初の試みで、リアルとオンラインを組み合わせた合唱が行われる。私にとっても恒例イベントであるが、佐渡裕さんからは「第九」にかける情熱や強いリーダーシップを感じずにいられない。そして、本番の演奏では、指揮者、演奏者、参加者、観客の強い「一体感」を感じる。「一体感がある」というのは、どういう状態なのか、体感したり、表現したりすることは極めて難しいように思えるが、私にとって「一体感」というのは、正にこの時のことを指す。

少し「エンタメ」系の話から入ったが、徐々に本題に移りたい。前回は、新しい働き方下で「ジョブ型」を機能させるために、どういう点を意識し、仕組み(ハード面)を構築していくべきか、「自由」と「責任」というキーワードを用いて紹介した。今回はソフト面、具体的には「自由」と「責任」を調和させるために、現場のリーダーがどうあるべきかを紹介していきたい。

 

前回のおさらい

まずは前回(ハード編)のおさらいである。

  • 横軸に社員から見た働き方やキャリア形成に関する「自由度の高さ」、縦軸に「責任の重さ、明確さ」を取ると、左下が「メンバーシップ型」、右上が「ジョブ型」と大別できる。何れも「自由」と「責任」はバランスしている。
  • コロナ禍前から「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行はトレンドとなっており、左下から右上に行くべきか否か、多くの企業で検討を始めていた。その最中の突然のコロナ禍で、働き方に関する「自由」を求める声だけが抗い難いレベルとなり、「放置」状態への「突入」を余儀なくされた企業が増えた。
  • この不均衡を是正する「切り札」として、「ジョブ型」移行トレンドが加速し、社員に「自由」を与える代わりに、どういう「責任」を引き受けてもらうのか、多くの企業で明確化しようとしている。
  • 「責任」を明確にすることが先か、「自由」を求めることが先か、どちらが議論の発端であったとしても、バランスが重要である。「責任」を明確にするのであればどういう「自由」を与えるのか、「自由」を得たいのであればその代わりにどういう「責任」を引き受けるのか、を一緒に議論することで調和の取れた仕組みとすることが肝要である。
  • 「ジョブ型」と言えば、「責任」を明確にし、「責任」の大きさとその全う度で処遇を決めていく仕組みであるため、「責任」だけが強調されがちである。しかし、同時に、①働く場所、②働く時間、③責任を全うするプロセス、④キャリア形成の「自由」を与えることで、社員に対する「メリット」にも訴求する必要がある。

「自由」と「責任」のバランスが取れるかどうかはリーダー次第

上記の通り、前回は主に仕組み面(ハード面)から「自由」と「責任」をどう調和させていくかを紹介してきた。しかし、仕組み面で調和が取れれば、「放置」状態や「束縛」状態が回避できるのかと言えば、答えは明確に、「否」である。現場リーダーの組織運営のあり方次第で、均衡はあっさりと崩れる。

ここで、コーン・フェリーが長年研究を積み重ねてきた組織を担うリーダーの特徴を可視化する枠組みを紹介したい。

以下に示す通り、「リーダーシップスタイル」、即ちリーダーとしての振る舞い方が、「組織風土」即ち、組織の雰囲気を形成し、その結果として「組織業績」が変動する、ということが分かっている。具体的には、「組織風土」に影響を与える因子の約5~7割が「リーダーシップスタイル」、「組織業績」に影響を与える因子の約3割が「組織風土」という結果がでている。

ここで、まずは「組織風土」に着目して、議論を深めていきたい。「組織風土」では、以下に示す6つの評価軸に分解することで、その組織の雰囲気を可視化していく。

この6つの評価軸を改めて見てみると、「方向の明確性」「基準」「評価・処遇」ではメンバーに対して「責任」を明確にしているかを可視化し、「柔軟性」「裁量」ではメンバーに「自由」度を与えているかを可視化している、と言い換えられる。最後、「一体感」は「結果指標」とも言われ、上記5つの評価軸が良化した結果として、最後に改善していくものと考えられており、実際に多くの組織における診断結果もそうであることを物語っている。

従って、各評価軸における診断結果から以下の様な状況が推察される。

「責任の明確さ」に関連するスコアが高く、「自由度の高さ」に関連するスコアが低い場合は、「束縛」状態になっていると言え、この状態が長く続くと社員が疲弊し、場合によっては、メンタルダウンや退職のリスクがある。

反対に「責任の明確さ」が低く、「自由度の高さ」が高い場合は、「放置」状態になっており、この状態が長く続くと社員が迷走し、組織としての規律がきかず、業績が低下するリスクがある。

従って、「責任の明確さ」と「自由度の高さ」を高いレベルでバランスさせることで「一体感」を醸成することが、リーダーの責務と言える。

では、リーダーが「自由」と「責任」を高いレベルでバランスさせるにはどうすれば良いのだろうか。

ここで、「リーダーシップタイル」の詳細を紹介したい。コーン・フェリーが様々なリーダーを分析した結果として、優れたリーダーは以下に示す6つのスタイルを状況に応じて使い分けている、ということが分かっている。

また、上記スタイルのどれを高めることが、組織風土のどの評価軸を改善させることにつながるか、その関係性も以下のように分かってきている。例えば、「指示命令型」のスタイルを高めることで、「方向の明確性」や「基準」は改善するが、それ以外の評価軸にはマイナス影響である、等である。

仕組み上、「自由」と「責任」のバランスが取れていたとしても、リーダーの組織運営のあり方次第で、均衡は崩れ、「束縛」状態にも、「放置」状態にもなりうることは、皆さんの肌感覚に照らしても容易に想像がつくだろう。

従って、組織運営においても「自由」と「責任」のバランスを保つことを心がけ、メンバーに活躍してもらう必要がある。そのためにも、ここまで紹介した診断手法などを用い、リーダーが自身のあり方を振り返る機会を設けることが有効と考える。そうすることで、ソフト面から組織活性化に貢献していくことが、リーダーに課せられた「責任」ではないだろうか。リーダーがその「責任」を全うした先に、「自由」と「責任」が高いレベルで調和された「一体感」のある組織風土が形成されるのである。

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