現代の日本企業が直面している構造的課題である年功序列の打破。日本企業のさらなる 発展に向け、今年、コーン・フエリーはこの課題に対する知見の発信に注力していく。

ここ数年、日本企業では職務型人事賃金制度(以降、ジョ ブ型制度と略す)の導入が流行となっている。正確にいえ ば日本はジョブ型制度導入の第3次ブームを迎えている。 第3次ブームの火付け役になっているのは、“年功序列を打破 しなければ という日本企業の危機感である。この勢いは一 過性のものではなく、しばらくの間は続きそうだ。

過去を振り返ると2000年前後に第1次のブームが起こった。 この頃、景気の後退を受けて思うような業績を上げられな くなった日本企業が続出し、コストの抑制が大きな経営課 題になっていた。かつては日本企業の強さを支えてきたと 海外から賞賛を浴びた終身雇用、年功序列が足かせとなり 人件費が利益を圧迫する図式がそこかしこで見られるよう になった。

この時期、人事の世界だけではなく世間的に「成果主義」 という言葉が流行した。業績によって厳格に社員の処遇を 決めていこうとする考え方のことを指している。成果主義 を体現するものとしてジョブ型制度が注目を集め、多くの 日本企業がこぞって導入を争った。名目こそ成果と処遇との関係強化を謳ったものだが、その実は人件費の削減を目 的としてジョブ型制度を導入する企業が殆どだった。日本 の企業が、ジョブ型制度が持っているコスト・コントロー ル効果を期待したのが第1次ブームだったのである。

2010年代に入ると、日本はジョブ型制度の第2次ブームを迎 える。このブームの背景には、日本企業のグローバル化が ある。当然のことながら、同じ日本の企業であっても、グ ローバル化の進み度合いには相当なバラつきがある。2010 年前後の時点で、海外での売り上げ比率が全体の半分を占 めるような企業もあれば、国内でしか事業を展開していな い企業もあった。その度合いに差はあれど、当時、多くの 日本企業が海外にこれからの成長の活路を求めようとする 機運が高まっていた。そこで登場したのが、グローバル・ グレードという仕組みである。

グローバル・グレードを簡単にいえば、世界共通で職務等 級を導入するものだ。国を超えて統一の等級制度を構築し ようとするとジョブ型以外に選択肢はない。職能資格は日 本独自の仕組みであるため、海外では受け入れられない。

もしも日本の本社と海外拠点との間で頻繁に人材の異動を 行い、いわゆるグローバル人事を加速させようとすると、 社員を格付ける統一の基準がないと極めて不都合である。 その基準となるのが等級であり、海外では主流派を占める ジョブ型の出番となる。日本だけでなく、グローバル全体 で人材の最適配置を行っていきたいと願う日本企業が、グ ローバル・グレードを取り入れていった。こうした企業が 第2次ブームの牽引役となったのである。

第一次・第二次ともにブームが過ぎ去った後、導入に踏み 切ったものの、ジョブ型制度の定着に苦戦している企業が 多いのが実態である。ジョブ型制度は、日本の独特な労働 市場や人事慣行とは根本的に相容れないものだからだ。多 くの企業は制度の導入で力を使い果たしてしまい、導入後 の定着に向けた努力や工夫を怠ってしまった。

日本企業がジョブ型制度を正しい形で運用し、定着させる には多くの困難を伴う。客観的に見て、ジョブ型制度を上 手く運用できているといえる日本企業はかなり少ない。そ れにも関わらずいま再びジョブ型制度が脚光を浴びている のは、日本企業が置かれている抜き差しならない経営環境 に原因がある。現在、5年先くらいの見通しが明るいとい い切れる企業は、残念ながら日本にはそう多くない。その 理由を大きく捉えれば、過去の延長線上にはない新たなチ ャレンジに成功できていないことがあげられる。

多くの日本企業では、既存の主力事業が成熟期を迎えてし まったか、衰退局面に入っているにも関わらず、新たな収 益源となるべき新規事業を軌道に乗せ切れていない。ベン チャーを代表する新興企業が、新規性の高いビジネスやサ ービスを次々と生み出し、従来の産業構造が破壊されつつ ある。名門と呼ばれる大企業でも、悠々と胡坐をかいてい るわけにはいかず、今までにない挑戦をしなければならな い。また、国内市場が既に飽和状態になってしまい、海外 への展開を図ったものの、その海外で十分な成果があげら れていない企業も多い。海外では、あらゆる意味で日本国 内の経験則が通用せず、自分たちの常識を捨てて挑まなけ れば勝ち目がない。

こうした非連続的な挑戦が求められる状況においては、年 功序列の人事が大きな問題になってくる。企業としての新 たなチャレンジを蝕む恐れが大きいからだ。年功序列の弊 害は以前から指摘されてきたが、年次を基準とした昇進や 社員のこれまでの功績を称えるための登用などが、大企業 を中心として未だ根強く残っている。反対から見れば、実 力があって成果もあげているのに、年次が浅いだけで昇進 させてもらえない若手社員、昔に会社に貢献したという理 由で要職に居座る経営幹部といった存在が至るところで見 られる。それだけ年功序列が日本企業には蔓延っている。

しかし、どれだけ年功序列の色合いが染みついていたとし ても、それを脱却しなければこの先の経営が危ういと考え る日本企業が増えているのも、一方で事実である。冷静に 見積もれば人件費が高騰し続けることは目に見えており、 将来の成長に向けて積極果敢に挑戦する人材も社内にいな い。そうした事実に正面から向き合う企業で、年功序列を 打破する契機としてジョブ型制度の導入が行われている。

しかし、ジョブ型制度を導入すれば、人事の年次運用を脱 却して真の適材適所を実現できるほど単純な話ではない。 もちろん、人事制度を職能型から職務型に切り替えること は必須の要件ではあるが、その他にも変えなければいけな いことがある。その一つが「人材の絶対評価」であり、も う一つが「人事の体制と仕組み」である。制度変更と併せ てこれらの改革に三位一体で取り組むことで、年功序列を 超えた適材適所が可能になるのだ。

専門家に問い合わせる

About the contributors

コーン・フェリー・ジャパン株式会社 シニア クライアント パートナー 組織・人事コンサルティング部門リーダー



コーン・フェリー・ジャパン シニア プリンシパル

オススメの記事