エンゲージメントケーススタディ集
Step5:アクション

社員エンゲージメント向上の成否は、調査結果を活用した改善アクションにあると言える。そこで鍵となるのが、アクションを開始する前にステークホルダーを効果的に巻き込むワークショップだ。ワークショップの種類やアクション推進時のポイントを、コーン・フェリーが提供した数々の事例の中から紹介する。

 

ワークショップの実施目的によりプログラムのバリエーションは様々
ワークショップの内容やアプローチは個社のニーズや参加者により様々である。ワークショップの目的を明確にし、専門のコンサルタントと共にそれを実現するためのワークショップのプログラムを丁寧に構築することが望ましい。
ワークショップは、その目的によりいくつかに分類することができる。ワークショップのプログラムを検討するにあたっては、エンゲージメント調査自体の実施目的に立ち返り、調査結果を受けて「誰に」「何を」期待するのかを検討するところが始点となる。主な種類とその効果は以下の通りである。
  •  経営層向け
    全社でエンゲージメント向上への追い風を醸成するために、トップ層の調査結果の理解、適切な危機意識の醸成を目的として行う。近年増加している、調査結果を経営計画や全社方針に反映させる場合にも効果的。
  • 人事担当者向け
    経営層、組織長のサポート役となる人事担当者向けに実施するもので、調査設計や設問意図、データ分析や結果解釈方法についての深い理解を目的とする。関連各社・部門・事業部付の人事などが集まり、全社横断での事例共有や意見交換の場としての効果も期待できる。
  •  組織長向け
    改善の主体である組織長が、調査結果を理解・納得し、能動的に改善アクションを推し進めることができるように支援する目的で実施。自組織の課題を分析し、アクションプランを立て、推進する上で重要なポイントを、座学と実践の両面でカバーする。
調査結果への理解を深め、改善活動への動機づけに成功したA社事例
ここで2つの事例を紹介したい。まずは、大手食品メーカーA社の例である。
A社では大規模なエンゲージメント調査を実施するのが初めてであったため、調査の設計、結果の分析・解釈方法、アクションプランの立て方等、改善活動の基本をまずはグループ各社の人事担当者が理解する目的でワークショップを実施した。
ワークショップは、個人ワークとグループワークから成る。参加者はワークショップ中に調査結果の分析を体験し、現状への理解を深めることで当事者自意識が醸成された。また、グループワークではコーン・フェリーのコンサルタントのサポートにより他社事例を交えて意見を交換したほか、参加者同士で現実的に改善活動を社内で推し進めていく上での障壁や、克服すべき課題についても活発な議論が行われた。学びの場としてだけでなく、実際に体験し、また意見を共有することにより、より深く調査結果を理解し、参加者一人ひとりが納得して改善活動を進めることができる機会となった。
社員エンゲージメントをビジネス上の課題改善に接続したB社事例
続いては、大手運送業B社の例だ。B社は参加企業各社のリーダー達を改善活動に巻き込むことを目的に、経営層向けワークショップを行った。
B社において特筆すべきは、調査及びワークショップの目的を社員エンゲージメントの向上だけに留めず、最終的にビジネス上の課題を解決し成長するための要素として位置付けたことだ。ワークショップは、まず調査結果から見えた課題を考察し、続いて日々感じている人事・ビジネス上の課題を整理し、目指すべき姿を描き、最終的にこの3つの観点を融合して、着手すべき課題の絞り込みを行った。これを実現するにあたり、コーン・フェリーのリーダーシップ開発コンサルタントたちも巻き込んでコンテンツを作成した。個社のニーズに従って、ワークショップの内容をカスタマイズした良い事例である。
改善アクション推進時には経営層の巻き込みが重要
このように、ワークショップの内容には各社の調査目的やワークショップへの期待によって様々なバリエーションがあるが、事例からは改善アクションを推進する上で共通する課題が見えてくる。ここでは最も代表的な2つを紹介する。
一つ目は、経営層の巻き込みである。前述事例①のA社で、人事担当者が改善活動を進める上の障壁として懸念したのは、エンゲージメントの改善が重要事項として捉えられないがゆえに組織長の協力を得るのが難しいことだった。
改善の主体となる組織長にとっては、改善活動が「追加のタスク」としか捉えられず、反発を招くケースは少なくない。調査実施前の段階から、経営陣よりエンゲージメント改善が重要事項であることを社内に発信し、関係者の理解を得ると共に、改善活動を行うために業務の優先度付けなどの環境を整備することが重要である。
同時に、経営層が社員及び組織長の意見を受け入れて、エンゲージメント向上のために変化する姿勢を見せることが効果的である。評価や処遇に影響するのではないかという懸念から、率直な意見を発することができない風土があるという課題がある組織は少なくない。
協力的な姿勢を経営層が示し、エンゲージメント向上活動の旗振りをすることが、全社での改善への風土醸成と現実にアクションを遂行できる環境作りに繋がる。
本当に着手すべき改善アクションは、現状とあるべき姿とのギャップから生まれる
二つ目のアクション推進の上で課題となる要素は、「あるべき姿」のビジョンをもつことである。あるべき姿とは、解決すべき課題とは対象的に、組織として目指すべきゴールを指す。この「あるべき姿」の共通理解が無い場合、効果が期待できる重要アクションを絞り込むことは難しい。
B社の事例においてハードルとなったのは、優先的に着手すべき課題が絞り込めず、アクション案が単なる「課題」の裏返しの羅列になってしまう点だった。
コーン・フェリーが実施するワークショップでは、現状(調査結果)を咀嚼した後に、組織の目指す姿と比較し、その間にある最も大きなギャップまたは阻害要因となっている要素を優先的に着手すべき課題として位置付ける。この課題を解決するのがアクションである。
そして、この「あるべき姿」のビジョンは日々の業務の中で考察し追い求めることが理想である。組織運営に関わるリーダーや組織長に対し、日ごろからこのようなビジョンを築く支援をすることも、効果的な改善活動を実施する上では重要であるといえる。

本事例から学ぶべきポイント:

  1. エンゲージメント調査とワークショップとの接続、目的の明確化の重要性
    調査実施からワークショップまでを一気通貫した目的のもとに行い、それに基づいたプログラムを設計することが重要。
  2. 当事者意識の醸成、納得感のあるアクション立案
    ワークショップ参加者が調査結果を咀嚼し、腹落ちして改善活動に当たることができるよう支援することが重要。個人ワーク、グループワーク、また専門コンサルタントを交えた議論で実現する。
  3. 経営陣のオーナーシップ、組織の目指す姿のビジョン構築など、アクション推進時の課題
    調査前から経営層やリーダーを中心にエンゲージメントの重要性を全社に発信したり、自組織の「あるべき姿」のビジョンを持ったりといった取り組みは、アクションの成否を握る重要な要素である。

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