エンゲージメントケーススタディ集
Step2:企画・設計

様々な事業・歴史を持ち、独自性の強い子会社を世界各地に多く抱える日本の総合電機メーカーA社。共通の指標を用いてグローバル全体で社員の意識を把握したいというニーズは強い。異なる視点・考えを持つ各社を巻き込みながら、「全社調査」を成功に導くには何が必要なのか? グローバル全体での社員エンゲ―メント調査を成功させた事例を紹介する。

 

まずはグローバル共通の「グランド・ルール」の設定から

 

世界中で事業を展開するA社では、社員エンゲージメントを重要な経営指標として意識しつつも、実態としては国・地域ごとにバラバラの内容でエンゲージメント調査を行っており、はたまた実施していないところさえあった。各社の歴史的な経緯や事業の独自性を考慮し、人事施策についても自由裁量をみとめてきたためであった。
このような状況ではグループ経営で世界に劣後してしまうと考えたA社は、社員エンゲージメント調査をグローバルで統一化することに舵を切った。その際、グランド・ルールとしたことは3つ、①グローバルで統一した指標を持つ、②年1回のサイクルで行う、③全グループ企業参加必須、である。調査運営のパートナーとして、グローバル規模でのデータベースとプロジェクト展開能力を有するコーン・フェリーを選んだ。

 

「なぜ統一するのか?」をプロジェクトチーム内で共有
3つのグランド・ルールをグローバル全体で徹底させるには、各社の理解と協力が不可欠である。A社本社事務局は、各地域の統括会社にエンゲージメント調査の事務局を立ち上げることを要請。プロジェクトが本格始動する前に、本社と地域事務局が理解を共有する場を設けることにした。その際、本社事務局が気を配ったのは、できるだけ強権的な印象を与えないことである。これまで独自の裁量をもってやってきた各地域にとって、「グローバル統一」は自分たちの自由を奪うものと受け止められかねないからだ。
そこで本社事務局は、地域事務局とのミーティングを数回にわたり設定。その中で、この調査が、各社の個別の状況だけではなくグローバル全体の状況を把握するためのものであること、そのためには全社で参加し、グループ内のデータを完全なものにする必要があること、また調査を定期的に行うことにより、調査からアクションまでのサイクルを各社で確立し、常に改善していく組織をグローバル全体で実現していくこと、などを丁寧に説明した。その結果、地域事務局およびステークホルダーから、この調査がグローバル経営にとって重要なものであるとの理解を得られ、また本社事務局に対する信頼も獲得できた。

 

プロジェクト中のコミュニケーションも緊密に・明確に

グランド・ルールについて共通認識を得ても、実際のプロジェクト運営となると、様々な問題や例外が出てくることは当然予想できる。「ある会社からこういう要望が来たが、これは受け入れてもよいのか?」「誰に相談すればいいのか?」「最終的には誰が決めるのか?」――これらは一見、複雑な問題のように見えるが、プロジェクト全体を司るグランド・ルール、およびコミュニケーション経路や意思決定プロセスが明確化されていれば、迷うことはない。逆に、それらが明確でなければ、プロジェクトは一貫性を失い、迷走する。そこで本社事務局は、プロジェクト中のコミュニケーション体制を明確に定め、何かの判断が必要な場合は必ず本社事務局に連絡し、地域レベルで判断しないことなどを定めた。
またプロジェクト中も定期的に事務局ミーティングを開催し、その場で問題を話し合い、解決していった。ウェブ会議では必ずビデオをオンにして顔を見ながら話すなど、存在感を示し、お互いの距離を縮めるための工夫も施した。

 

調査後もアクション支援について共有。最後まで連携する姿勢を忘れずに

A社初のグループ全体調査はつつがなく終わり、調査結果も経営陣にインパクトをもって伝えられた。例えば、結果が地域ごとに比較できるようになったことにより、グループ全体の理念やビジョンの浸透度に地域間で差があること、また日本では特に業務効率性の問題が深刻であることなどが可視化された。各地域の組織責任者にも結果が配られ、プロジェクトはいったん幕を閉じた。

一年後、同様の調査を実施、前回調査との比較が出たが、調査後に改善アクションを取ったところとそうでないところで、結果に大きな差がついた。実は前回結果が配信されて以降、事務局同士の連携は止まっていた。調査開始から結果報告までについては、一貫したルールを定めて緊密にコミュニケーションを取っていたものの、その後のアクション支援のフェーズについては特に事務局では一定のルールを定めず、各地域に一任していたのであった。

アクションの有無によって結果に明確な差がつくことを実感した本社事務局は、アクション支援にも力を入れることを決意。調査後も事務局同士で定期的にミーティングを持ち、各地域のアクション支援の状況などを報告し合うことにした。そこでは各地域の調査の理解度、活用への意欲、課題意識などが共有され、お互いに刺激を受ける場となった。また、調査を「経営ツール」として全社に浸透させていこうという気運がグローバル全体で高まっていった。

本事例から学ぶべきポイント:

  1.  「なぜ全社調査なのか」「何のためにするのか」を関係者全員で常に共有
    プロジェクト中のタスクも多いグローバル調査は、運営のための「How to」に話が偏りがち。その前に、なぜ全社で調査を行うのか(Why)、目的は何なのか(For what)、の部分事務局内で徹底的に議論し、理解を共有することが重要。
  2. “顔の見える事務局”主導で一にも二にもコミュニケーション
    問題がある時もない時も、信頼関係がなければコミュニケーションはスムーズに進まない。プロジェクトの初めから終わりまで、一貫して事務局の存在感を示し、いつでも話し合いにオープンな雰囲気を醸成する。

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