エンゲージメントケーススタディ集
Step1:経営戦略とのアラインメント

エンゲージメント向上の第一歩は現状の適切な可視化である。数多のコンサルティングファームやリサーチ会社が、様々な枠組みやアプローチを提案する中、自社に適した調査ツールを、どのような観点から選べば良いのか。製造会社A社の事例を紹介する。

 


国内トップの水準のため課題はなし?

製造会社Aでは、これまで国内コンサルティングファームが提供する社員満足度調査を毎年実施してきた。しかし、いくつかの課題認識から、調査の切り替えを検討していた。その最たるものが、明確な組織課題が調査から抽出されないことだった。いわく「大半の従業員は会社に大変満足しており、スコアは国内トップクラス」の状況とのこと。似たような結果が数年続いている。IRや優秀人材の採用を意識した取り組みであれば喜ばしい限りなのだが、更なる事業成長のために組織・人の側面から課題を抽出すること、が事務局としてのねらいであった。そのため、課題が浮き彫りにならないのであれば継続することの意義は薄いと感じていた。
また、現在の調査は国内関連会社のみを対象に展開していたが、今後は海外を含む全拠点を対象とすることを検討しており、現在の調査会社ではそのケイパビリティがないことも、切り替えを考える理由のひとつとなっていた。


社員満足と社員エンゲージメントの根本的な違い

そのような課題意識の中、コーン・フェリーとの議論を通じて明らかになった点は大きく2つ。一つは「社員エンゲージメント」は「社員満足度」と似て非なるものであること。社員エンゲージメントは昨今よく耳にする概念であるが、会社に対する満足ではなく、社員が自発的な努力や高い貢献意欲を発揮しているか。故に、社員エンゲージメントは社員満足度よりも一段上の概念であり、組織業績により大きな影響を与えるために、世界の経営者が注視する指標となっている。 満足度の高い社員が必ずしも、貢献意欲が高く、自発的な努力をしているわけではない。実際に満足度調査からエンゲージメント調査に切り替えた会社では、満足度調査と比べ、低い数値が抽出されることも確認できている。


外部ベンチマークと比較する意味

2つ目は、パートナーとなるファームを選択する際、国外におけるケイパビリティはもちろんのこと、適切な外部ベンチマークとの比較が大切な視点であること。
コーン・フェリーの調査では、業種や組織規模よりも、国が調査結果に与える影響が大きいことが明らかになっている。
実際の結果データを見ていると、エンゲージメント上位国であるインドやメキシコ等と比べ、最下位国である日本との差は、実に19ポイントにも上ることがわかる。調査結果を事業単位や組織間で比較することは重要だが、労働市場や事業環境等、経営的な観点を考慮せず、日本と他国の結果の高低を単純に比べることにあまり意味はない。むしろ結果を見誤ることになりかねないリスクがある。
調査言語や現地におけるオペレーション等の問題以前に事業を展開する市場において適切な対象となる企業群と比較できることが、正しい分析を行ううえでの前提条件となるのである。
以上のような背景から、A社は検討の末、コーン・フェリーの社員エンゲージメント調査を導入することを決めた。対象範囲も国内に限定せず、事業を展開する世界8ヶ国で統一した調査を多言語で行うこととした。

 

従来の調査では明らかに出来なかった課題を明確化

初のグローバル調査を実施して分かったことは、まずは国内外を問わずA社の社員はグローバルでもトップクラスの高いエンゲージメントレベルを持っているということであった。そのため、比較すべきベンチマークは日本平均ではなく、今後の事業展開を鑑みても、世界平均であるべきだとした。
その観点から結果を詳細に見ると、社員を活かす環境面が十分に整備できていないという課題が見えてきた。特に「業務プロセスの非効率」や「組織のサイロ化」などこれまでの満足度調査では見えていなかった課題が明らかとなった。
経営陣や各事業本部のトップにも結果を共有し、課題意識を醸成することができ、次期中期経営計画の策定時に現状を確認するデータとして活用するに至った。


本事例から学ぶべきポイント

1. ビジネス環境と符合した調査方法・ツールを選択
競争環境、労働市場に則したグローバル展開が可能な調査ツールの導入を決定。当たり前のようでいて、過去からの慣習などを理由に、人事施策やその対象範囲がビジネスと合致してないケースは少なくない。
2. 調査のねらいを拠り所に、現状に甘んじない事務局の本気度
“更なる事業成長に向けた課題抽出”という目的のため、従業員への要求水準が高いエンゲージメントを世界平均という高い基準から測定し、結果を有効活用。

 

 

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