金融緩和による長期的な低金利環境、少子高齢化や人口減少を背景とした国内経済の停滞、顧客ニーズ・行動の変容、異業種・Fintechの参入、金融規制の変化など、日本の金融機関を取り巻く環境は、不確実・非連続に変化している。このような中、将来の金融機関の経営を担う「経営人材」の選抜・育成を本格的に検討する金融機関が増えている。

金融機関といえば、学歴の高い優秀な新卒社員を大量に採用し、厳しい出世競争に勝ち残ったエリート中のエリートが晴れて経営者になるというのが大方の世間の見方であろう。そのような意味で優秀な人材に恵まれているはずの金融機関が、真剣に経営者の育成・確保に取り組んでいる背景には何があるのだろうか?

コーン・フェリーは、金融機関を含む主要な大企業に対して、経営人材の要件定義、アセスメント、選抜・育成・採用などの、サクセッション・マネジメントの取り組みを包括的にご支援している。これまでのご支援を通じて、国内の大手金融機関(銀行、保険、証券、アセットマネジメント)における500名超の部長層以上のエグゼクティブアセスメントを実施していることから、実証データの分析を通じて日本の金融機関の経営人材の特性を把握することが本稿の目的である。

まず、分析対象となった大手金融機関の6割超が採用している経営者要件(コンピテンシー)は、「顧客志向」、「ビジネスの見識」、「複雑な状況への対処」、「戦略的思考」、「イノベーションの推進」、「勇気ある対応」、「判断の質」、「成果の創出」、「ビジョンと目的の推進」、「人材の育成」の10個であることが明らかになった。

これらのコンピテンシーからどのような経営人材像が見えてくるだろうか?コンピテンシーの類型化とこれまでのディスカッションを通じて、大手金融機関における将来の経営人材像として、大きく3つの人材要件があると考えている。その3つとは、「複雑かつ不確実性の高い顧客ニーズやビジネスを捉えて、現状を打破する戦略を策定する」、「自らの意見を持って、適切でタイムリーな判断で、イノベーションや変革を実行し、成果を上げる」、「ビジョンと戦略を組織に浸透させて人材を育てる」、であり、これらの要件を兼ね備えた人材を将来の経営者としたいという特徴が見えてきた。

図1.大手金融機関が採用する経営人材要件(コンピテンシー)

 

次に、実際の500名超のアセスメントデータから、経営人材として求められる期待レベルと現状の候補者の評価結果に関して、どの経営人材要件にどの程度のギャップがあるかを明らかにした。詳細は分析結果をご参照いただければ幸いであるが、結論としては、コンピテンシー、性格特性、経験、動機(これらの4つはコーン・フェリーが経営人材を定義するフレームワークである)、ごとにギャップの大きい項目を特定した。また、ギャップが大きい項目を類型化すると、金融機関が現状抱えている組織・人事課題「顧客や環境変化への対応力が乏しい」「保守的なカルチャー」「人材育成や人材の多様性が不足」とも関連していることが伺われた。これらの課題を解決するために、大手金融機関は、経営人材の採用・選抜・育成の観点から今後も抜本的な改革が求められている。

図2. 金融業界のアセスメント結果分析を踏まえた考察

 

以上、金融機関における経営人材像と課題について論じたが、足元もコロナ禍で、金融機関を取り巻く環境は更に大きく変わりつつある。今後も各金融機関が環境変化の中で勝ち抜いていくための経営人材の動向・特徴として、金融機関経営者・人事関係者のサクセッション・マネジメントの検討の参考になれば幸いである。

 

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コーン・フェリー・ジャパン アソシエイト クライアント パートナー

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