コーン・フェリーの柏倉大泰 (かしわくら・ともひろ)です。

11月の三連休を前に都内では新規感染者が過去最多を記録、小池知事が「会食は是非『小人数』。できれば『小一時間』。『小声』で楽しんで、料理は『小皿』に分けて、『小まめ』に換気や消毒をしていただく」5つの「小」を提唱しました。先行的なワクチン投与の話もでていますが、コロナ禍は世界的に引き続き混乱をもたらしています。

ジョブ型人材マネジメントにおけるコンピテンシー再考ということで、この4月からこれまで5回にわたってコンピテンシーについて考えてきましたが、奇しくもこの期間は世界的なコロナ禍と重なっていました。今回が最終回ということで改めて読み返してみると、コンピテンシー再考なのかコロナ考なのか、よくわからない内容となっていますが、小池知事の「小」というキーワードを見て思うのは、コンピテンシー・コロナいずれの観点からもこの半年で加速度的に変化したのは「小」ならぬ「個」というキーワードではないか、ということです。社会や会社で集団としてのリアルな接点が制限され、これまで以上に社員ひとりひとりの「個」の存在が浮き彫りとなり変化しているのではないでしょうか。

「個人」を取り巻く変化1:「個」を活かす

いま加速度的に日本で起こっている大きな変化のひとつは、集団に個性を埋没させて殺すことでなはく、むしろ個性を活かすことが積極的に求められているという変化です。ジョブ型人材マネジメントを導入する会社にとっての最終的な目的のひとつは人材マネジメントの個別化を進めることで社員ひとりひとりのエンゲージメントを高めるということにあります。一方で、社員の立場からすれば、「好きこそものの上手なれ」ということで、自らの個性を最大限に生かして周囲に貢献していくということができる状況を積極的に求めていく、という状況になりつつあります。自分のコンピテンシーが活きる場所を積極的に模索するということが今後益々個人にとっても重要になるでしょう。

「個人」を取り巻く変化2:自ら試練をデザインする

そうした変化に誘発される形で、個人の成長を集団に委ねるのではなく、自ら経験をデザインし自分の可能性を開放していくという変化も加速していくではないでしょうか。特に日本企業では成長の機会は会社が与えてくれるものという位置づけでしたが、終身雇用の保証が会社としても難しく、個人としても期待しない状況となれば、個人にとっては試練を奇貨ととらえて自分自身を成長させていくことがこれまで以上に大切になるでしょう。自分にとってコンピテンシーを鍛えるのに最適な試練はどこにあるのか、個人として探求することが重要となります。

「個人」を取り巻く変化3:自らを言語化する

こうした変化の中で、会社の言葉やモデルに頼りきりになるのではなく「個」としての自分自身を言語化し、周りに発信していくことで「個」として周囲とつながっていくということも大きな変化となるでしょう。ジョブ型の人材マネジメントの現時点での最大の難関は、市場全般で対外的にも通用する「職務」という概念を、メンバーシップ型に慣れ親しんだ社員に理解・活用してもらう、ということにあります。同時に「個」という概念についても、市場全般で対外的に通用する形式で発信することは今後大きな課題となるでしょう。そうした状況においてこそ、長年の研究を通じて構築されてきたコンピテンシーはまさに自身の特徴の言語化と、多様な「個」間での共通言語としての機能を果たすのではないでしょうか。

松下幸之助氏が「成功とは自分の天分を発揮し尽くすことだ」と喝破したように、会社のモデルや基準で成功を測るのではなく、自らの可能性をどれだけ発揮するかが大切になる社会をコロナ禍がもたらしてくれているのかもしれません。コロナ禍という試練が日本社会をよりよく成長させるきっかけになることを祈りつつ、ジョブ型人材マネジメントにおけるコンピテンシー再考を終えたいと思います。ここまで読んで頂きありがとうございました。

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コーン・フェリー・ジャパン プリンシパル

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