コーン・フェリーの柏倉大泰 (かしわくら・ともひろ)です。

フランスでは10月30日から2度目となる全国的なロックダウン措置を発表など、欧州では再びコロナ禍が拡大 しています。欧州各国はこれまで以上に厳しい規制・施策を検討しており、EUの基本理念のひとつである人の移動の自由も問い直されています。コロナ禍は経済問題だけでなく様々な社会問題を顕在化または深刻化させています。

 

経営者に求められる能力は自己変革

日本企業においてコロナ禍が顕在化・深刻化させている問題のひとつは、メンバーシップ型からジョブ型への人材マネジメントのシフトであり、その革新に必要な経営者に求められる能力ではないでしょうか。コーン・フェリーが2019年に実施した調査では、VUCAな事業環境においても自己変革を遂げることで高い成果を実現している経営者(Self-Disruptive Leader )には5つの大きな特長、各特長2つの合計10の主要なコンピテンシーが明らかになっています※1。

 

先見性(Anticipate)

過去の知識・経験が通用しなくなる破壊的変化が常態化する中、広い視野から環境を素早く理解し意思決定すること、組織の力を結集させグローバル規模で社会の要請に応えられる機会を作り出したいという意志をもっていることが一番目の特徴です。つまり、将来に対して「そうであろう」という理解に加えて、「そうしたい」という意図を明確に有しているのです。ジョブ型の人材マネジメントにおいては、会社として事業をどのようにしたいのか、という戦略や方針が出発点となることからも、経営者は文脈を紐解いて自らのストーリーを伝えることが特に大切となります。

主要なコンピテンシー:

  • グローバルな視点 - グローバルな視点を持ち、広い視野で問題に取り組む
  • 戦略的思考 - 将来の可能性を見極めたうえで、現状を打破する戦略を策定する

 

活性化(Drive)

不透明な状況においても目的意識や意義で動機づけることで組織の活力を引き出していることが二番目の特徴です。VUCAな事業環境そのものであるコロナ禍における組織運営において、日々の進捗管理に苦労されている方も多いのではないかと思います。そうした中で何を(What)、どのように(How)に焦点を当てるのではなく、なぜ(Why)でベクトルを合わせることで前向きな姿勢を引き出すことが経営者には求められています。とくにジョブ型の人材マネジメントにおいては社員が会社を選ぶ傾向がますます強くなるため、会社として社員が所属することの意義を状況に応じて示すことが益々問われています。

主要なコンピテンシー:

  • 多様な状況への適用 - さまざまな状況におけるニーズの変化に合わせて、自分のアプローチやふるまいを即座に変える
  • あいまいな状況への対応 - 物事が不確実なときや前途が不明確なときでも効果的に業務を遂行する

 

スピード(Accelerate)

マネジメントサイクルといえばPDCAという言葉が浮かんできますが、コロナ禍でまさに私たちが体験しているように事前の綿密なPlanが通用しない事業環境も今後増えてくるでしょう。そうした中ではまず行動を促し、そこから学び、素早く軌道修正を繰り返すことで成果を追求するための働きかけが経営者には求められます。入念な計画に基づいて一糸乱れぬ実行を徹底するのではなく、曖昧な環境の中で躊躇しがちな組織の動きを物理的・精神的に後押ししていることが三番目の特徴です。

主要なコンピテンシー:

  • 的確な計画立案 - 組織目標と整合した方策を推進するために、計画を立案し、業務に優先順位をつける
  • 成果の創出 - 厳しい状況にあっても着実に成果に結びつける

 

パートナー(Partner)

四番目の特徴はパートナーシップの重視です。自前主義にこだわらず競合ですらパートナーとして連携していく動きがこれまで以上に加速しています。これまでは業界ごとの壁があり、この業界ではこれが当たり前、というものが存在していたことで企業本位の動きもある程度許容されていた面がありました。しかし、あらゆる垣根が崩れていく中で、顧客本位で価値を生み出そうとする経営者ほど、様々なコンフリクトや関係者の調整がたとえ必要でも、内部の能力や系列・グループにとらわれずに顧客が必要としているものは積極的に外部に求めていく動きを見せています。

主要なコンピテンシー:

  • コンフリクトへの対処 - 対立が起こった状況にも、穏便に効果的に対処する
  • 関係者間の調整 - 複数の関係者のニーズを予測し、バランスをとった対応をする

 

信頼 (Trust)

そして五番目の特徴が信頼関係の重視です。コロナ禍においてはこれまでのコマンド&コントロール的な管理の仕方が機能しないことはわかりながらも、ひとりひとり異なる状況の中で異なる価値観を有する社員ひとりひとりを大切にしていくことの難しさを私たちは日々痛感しています。VUCAな事業環境においても社員ひとりひとりの目的意識に働きかけて社会や組織への貢献を最大化できることが経営者には今後更に求められています。特にメンバーシップ型が重視していた安心感に代わり、ジョブ型では信頼感を醸成することが重要となります。

主要なコンピテンシー:

  • 信頼の獲得 - 正直で、誠実、率直な行いで他の人からの信用と信頼を獲得する
  • 多様性の尊重 - 異なる視野や文化が組織にもたらす価値を理解する

 

コロナ禍はSelf-Disruptive Leaderリーダーの創出を加速

こうした5つの特長と10のコンピテンシーを備えたSelf-Disruptive Leaderはコーン・フェリーのデータベースによるとコロナ禍前の数値ではありますが全体の15%程度にとどまっています※2。これは全員がSelf-Disruptive Leaderになれるわけではない、ということに加えて、そもそも全員がなる必要がない、ということも示しています。また各社ごとに置かれた状況により自己変革を遂げることができる経営者の要件も変わってくるでしょう。自社においてSelf-Disruptive Leaderがどれぐらいの割合で求められ、どのような要件が求められるのか、コロナ禍はそうした検討の呼び水にもなるのではないでしょうか。エグゼクティブ・アセスメントで経営者候補としてお会いした方々の中でも、東日本震災のような大きな社会問題に直面し、平時に比べて顕著に自己変革能力を発揮している方々が多くみられました。経済価値に加えてESGやSDGsの観点から社会価値の創出が経営者に求められる中で、コロナ禍はこれからの経営に求められる自己変革能力の覚醒を促す機会になるかもしれません。

※1/2 Korn Ferry “The Self-Disruptive Leader Technical Brief”

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コーン・フェリー・ジャパン プリンシパル

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