コーン・フェリーの柏倉大泰 (かしわくら・ともひろ)です。
8割おじさんこと西浦博教授がコロナ禍第二波の警戒を呼び掛ける中、夏休みを前に東京都では一日あたりの患者数が7月31日、8月1日と過去最高を二日連続で更新しました。事態の収束が見えない事業環境に置かれ、コロナ禍の一進一退を見極めながら柔軟に対応していくことが多くの企業に依然として強いられています。

これまでの人事部の役割 = 人材の需給調整

コロナ禍により短期的な事業環境の不透明感が増していることは確かですが、これまでも長期的には一定の好不況の波はありました。そうした大きな景気循環を捉えて、事業の継続的な運営・発展に必要な人材を確保することがこれまで人事部に期待されていた役割のひとつでした。コーン・フェリーが2004年-2014年に実施していた「ベストリーダーシップ企業」調査では、リーダーシップ育成に優れた企業は事業目標達成の成否をわける「ミッションクリティカルロール」を明確にした上で当該ロールにおける「需要」と「供給」を中長期的にマッチングさせていたことが明らかになっています。



これからの人事部の役割 = タレントバリューリーダー

しかし事業環境の中長期的な不透明感が増す中で、人材の「需要」と「供給」の調整を超えて、不透明な事業環境においても継続的に企業価値を向上させるために、人事部には人材に関する戦略的意思決定を推し進める役割が期待されるようになっています。コーン・フェリーでは、そうした人事部の役割を「タレントバリューリーダー※1」と呼んでいます。タレントバリューリーダーに求められる主な役割としては

• 企業または事業の戦略を推進する少数精鋭のリーダーシップチームを編成する
• 事業の変化が組織・人材に与える影響に関する洞察をもつ
• 成果創出に向けて人材開発手法を多様な人材に合わせてカスタマイズする
• 様々な役割で活躍することが期待できる優秀な人材を外部市場から獲得する
• 組織のサイロを超えた適材適所の異動に対する事業リーダーの協力を引き出す

が挙げられます。タレントバリューリーダーには、どのような人材がどのような価値を生み出すことができるのか、事業と人材に深く精通し、事業リーダーを補佐していくことが求められています。

 

ジョブ型人材マネジメントにおけるタレントバリューリーダーの要件それでは、ジョブ型人材マネジメントへのシフトを進めていく上で日本企業の人事部がタレントバリューリーダーとしての役割を果たす上で重要となる要件は何でしょうか。私は毀誉褒貶を顧みず専門的な見識や自身の直観に基づいてリーダーの意思決定に資する施策を打ち出す8割おじさんのような思考の独立性にあると思います。これまでの人事部に求められていた人材の需給調整をする上では、事業が定めた前提条件の中で資源を最適化することが人事部には求められていました。しかしこれからの人事部には、「ジョブ」と「人材」をマッチングさせる戦略的意思決定に関与することで企業価値を生み出すことが期待されています。コーン・フェリーの調査では、「ジョブ」と「人材」の特性がマッチした場合、最大で13倍エンゲージメントが高まることが明らかになっています※2。その期待に応えるためには、事業の定めた前提条件を鵜呑みにせずに、データや直観を駆使してフレームワークやモデルを構築し、過去の延長線上に必ずしもない企業価値向上施策を自律的に導き出すことが必要となります。当然、そうした未知の施策に対しては疑問の声も多くでるでしょう。そうした疑問に答え、事業リーダーの理解と協力を引き出すツールとして人事部が駆使できる選択肢は現状では残念ながら多くなく、その貴重なツールのひとつがコンピテンシーです。事業と人材をつなぐコンピテンシーに関する深い洞察とデータをもち、人材に関する戦略的意思決定を思考の独立性をもって推し進めることが、今後求められる人事部の役割、すなわちタレントバリューリーダーとしての要件といえます。なんだか8割おじさんこと西浦博教授を随分と持ち上げた記事になってしまいましたが、私と年齢が同じという以外に特に接点はありません。

 

※1 日本経済新聞出版 「タレント・ウィンズ 人材ファーストの企業戦略」
※2 Korn Ferry Institute “Fit Matters”
専門家に問い合わせる

About the contributor

コーン・フェリー・ジャパン プリンシパル

オススメの記事